第46章 「恋の和歌集(10)家康様編」
私達は三人肩を並べ校門を潜る。
早帰りでも、寄り道が出来ないから残念だねと私が言うと、政宗が何なら店に来て勉強会するか?と思いも寄らない提案が。
行きたい!と政宗の腕に飛びつくと、反対側の家康に首元を掴まれ、
「そんな余裕あんの?歴史、赤点取っても知らないよ?」
「うっ……。でも、勉強会は何処でしても……」
「この前もそう言って、店で政宗の試作品食べてお腹一杯で、寝てたの誰?」
私です。シュンと肩を落とし、政宗の腕から離れた。
「テスト終わったら、ゆっくり来い」
「うん!よーし、頑張る!」
ほんとは家康と二人で勉強するのが、気まずかった。でも、約束を理由もなく断るのは嫌だし……
(今日で、最後にしないと……ね)
いつ迄も、
甘える訳にはいかないよね。
なのに、
「ちゃんと解ってるよ……」
トクトク鳴り出す鼓動。
「わかってないから、言ってんの。だから、わかるまで……このまま、ずっと言い続けるから」
このまま離さないから。
家康が私に触れる度、
家康の気持ちがわからなくなる。
そして私は家康に触られる度……
「……ひまり」
私の中に何かが、
芽生え始めたのが、
わかってしまいそうで……
「い、えや……す」
ーー好きな子、いるから。
あの時聞いた、言葉。
音も無い不安が、
少しずつ広がり始めた。