第46章 「恋の和歌集(10)家康様編」
あんなに空いてたお腹が嘘みたいに感覚がなくなっていて。
私が教室の扉を開けると、真っ先にゆっちゃんが飛びついて来る。
皆んな心配してたんだよ!
会議室から全然戻ってこないし!
先生は教室に戻ったはずだって言うし!
捲し立てるように、ゆっちゃんは早口で話す。
私が戻ってくるのを、ずっと待っていてくれたみたいで……
机の上には、一口も手をつけてないお弁当が置いてあった。
私は、両手を顔の前で合わせ
「ほんとごめんね?ちょっと話し込んでて……」
「誰とよ〜〜」
「ただの友達だよ!それより、残り五分しかない!!急いで食べよ!」
無理矢理、笑顔を作った。
「そんなにガッつくと、詰まるからやめとけ」
「らぁいじょうぶ(大丈夫)」
ほんとは、あんまり食べたくないけど。
「……何かあったの?」
「もぐんぐっ。なんもないよ」
家康は鋭い。
私は誤魔化すようにお弁当を頬張り、先生から預かって来たことを伝え、スカートに入れていた課題のメモを二人に渡す。すると二人は顔を見合わせ、
「……お前にやる」
「……あげる」
「へ?何で?」
好きな子に選んだ和歌を貰う訳には……そう思い遠慮すると二人は良いからと、私の机の上にポンと置く。
「まぁ、何だ///とりあえず、だな」
「……勉強がてら詠み解きしてみれば?///」
???
二人の顔が赤い理由は分からないまま。私は貰ったメモを再びスカートの中に仕舞った。