第217章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(4)弓乃編
文化祭に告白をしたかった理由。
そんなの、決まってる。
イベント時は、告白成功率が上がるって雑誌に書いてあったっていう単純な理由。一緒に共同作業したり、一緒に行動したり……
関係が深まった時だからこそ、
成功しやすい告白。
そんな確かなものじゃない確率に、無鉄砲な私が縋りたくなるぐらい……
悔しいけど、
ほんと悔しいけど。
政宗が好き。
だから、だから。
この前のハロウィンの日。
ーーおふくろの味。俺は知らないからな。だから、お前が前に屋上で言った言葉。……あれは、かなり驚いた。
文化祭のプリンの試作品作りで見た、青い瞳。一瞬だけ、その奥が揺らいだ。
ーーご、めん。知らなくて…ただ、本当に、政宗みたいっておも、え…たから…。
屋上でのお弁当交換。
ブレザーをいきなり被されて、凄いキスされて、正直……両思いって勘違いしても良いんじゃないかって。
ーー謝るな。……嬉しかったぜ。
ーー政宗……あ、あのさっ!
ーー出来たぞ。…ほら、でかい口開けろ。
冷蔵庫で冷やしたプリン。
口の中に半ば無理やり放り込まれ、その先の言葉ごと呑み込まされて……
また、自信が消えかけた。
もっと、自信をつけないと!そう、思って雑誌読み漁ってダイエットしたり、美肌パックしたり、少しでも胸が大きくなるって聞けば、色々と試したり、告白するタイミング、台詞、場所。
明日の為に……
バッチリ、予行練習済み。
なのに。
なのに。
なのにっ……。
「明日、文化祭なんだぁ。なら、少し、覗きに行こうかな?」
なんで……
なんでっ!
このタイミングで元カノなんて!
現れんのよーっ!!
心の中で私は大絶叫。
肩にさり気なく触れる、
手入れの行き届いた綺麗な手。
スカートの横で、震える両拳。
明日の告白。
どうすんのよっ……。
今にも、泣きそうだった。