第217章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(4)弓乃編
そそっと、
棚の前に立つ政宗の所に移動。右隣に寄って、クイクイと肩に掛けてあるブレザーを摘む。
「ねぇ、ちょっと。神木くんってさ……もしかして……」
少し背伸びして、耳打ちするように小声で話しかける。でも、すぐに政宗が全く聞いてないのに、気づいて……
大きな声になる。
「って!何、真剣に商品見てんのよ!」
「新商品、増えてるからな。来月、店に出すクリスマス試作品、考えてる所だ」
普段から政宗はちょくちょくこの店に来ているらしくて、完全に文化祭そっちのけ。メニューのほうじ茶プリン、提案しときながら……
顎に手を添えて、真剣な横顔。
格好良いから、文句ひとつ言えない。
私は、この前のハロウィンの日のことを思い出して、もう一回、ブレザーを掴んだ時。
誰かの携帯が鳴る。
「……わかった。なるべく早く戻る」
徳川の携帯。話を聞く所、どうやら教室で準備してるクラスの男子からで、 飾り付けを先にしたいから、急いで購入して戻ってきて欲しいって、頼まれたらしい。
と、いうことは……
「ゆっちゃん、政宗!荷物多いけど大丈夫??」
「任せときなって!政宗いれば二人分になるから!」
ひまりは気を使ってくれたのか、ぶつくさ文句言う徳川の背中を押して、神木くんに手招き。
「結局、お前とか。しっかり、荷物持てよ」
「わかってるわよ!」
皆んなと買い出しから、二人っきりの買い出しに切り替わり……
(よし!このチャンスを生かさないとねっ!)
少しは素直になれますように。
そう心で呪文のように唱えた時。
「あれ…?もしかして、政宗くん?」
ぷっくりした唇。
その横に、小さな黒子。
「……久しぶりだな。って、敬語使った方がいいか?」
「別に使わなくても良いよ。いくら年上とは言っても……」
元カノなんだから、ね?
私は耳を疑う。
柔らかそうな、ナチュラルウェーブのセミロング。白く透き通ったどこかの女優さんみたいな……華やかな顔つき。
有名なお嬢様学校の制服を着た、女の子が政宗の逞しい肩に触れた。