第217章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(4)弓乃編
自動ドアを通って店内に入る。
中は割と空いていて、大きなカートをひまりが嬉しそうに引っ張ってきた。凄い!大きい!見て見て!とか、小さい子みたいに興奮する横で、徳川が口元隠してニヤける姿をバッチリ目撃。
(なるほど〜あぁいう所がツボなわけね!)
今度、いじってやろう〜。
二シャリと私は笑う。
普段から、ひまりの親友ポジションの私にでも、無愛想な徳川。大体、こっちは色々と天音ちゃんの件で協力してあげたっていうのに。
政宗の情報とか、何一つ教えてくれないし。まぁ。それは私が聞き出したりするタイプじゃなくて、真っ向勝負な性格を、何気に知ってるからかもしれない。
「まずは、卵と牛乳コーナー!」
「うん!あと、ほうじ茶の粉末もいるよね!」
私は、ひまりの隣に移動。
大きすぎて引くのに苦戦してるから、一緒にバーの部分を持って、店内を見回す。
ズラリと棚に陳列された、業務用の商品。大きな冷蔵庫には、大袋の食品。普段行くスーパーと売っている物の大きさが違って、大はしゃぎ。
「ゆっちゃん!見て見て!」
「でっかー!ってか重っ!」
三十人分が作れるカレー粉の箱を持って、二人で通常サイズを指で表現して、比較してると……
コンッ。
すかさず、
徳川が背後からひまりを小突く。
「こら。はしゃぎ過ぎ」
「ふふっ。つい!ごめんなさい〜」
「ひまりの可愛い顔。すぐに隠れるね。その大きさだと」
「ほんと、大きいよね〜〜」
屈託の無い笑顔を、
二人に向けるひまり。
神木くんのさり気ない胸キュン台詞に反応して、眉をピクリと動かした徳川。言われた当の本人は、もうカレーの箱に夢中で、全く耳に届いてない。