第217章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(4)弓乃編
目的地は、まだ暫く先。
私たちはその間、明日の衣装ネタで盛り上がる。お化け喫茶だから、勿論男子も女子も普通のコスプレじゃない。実費で用意したり、ハロウィンで使った衣装でそれっぽいのがある子は、貸し借りしたりするらしい。男子は制服をウェイターっぽくして着こなして、被り物をするのが大半。
裁縫が得意だったり、手芸部の子に手伝って貰ったりする子もいる。
「衣装と言えば……ひまり、自分で作ってなかったっけ?際どいのとかだったら、許さないよ」
際どい。
その単語にギクッとしたのは……
「ん?際どい?ゆっちゃんがコレって、言ってくれたのを作ったんだけど……ふふっ、まだ内緒!家康にも作ってあるから期待してね!信康くんのは、クラスの子が張り切って作ってたみたいだよ!」
ひまりより寧ろ私。
思わず跳ねる肩。
(やばっ!)
それを見逃さなかった徳川が、私に鋭い視線を向ける前に白々しく話を切り替えて……
「あんたのは、私が作ってあげたんだから感謝しなさいよ!」
「あ?んなもん。途中で破れたらどうすんだ」
その台詞にムスッとして、
隣を歩く政宗の腕をバシッと叩く。
でも、叩いた後にすぐに後悔。
(ばか。こんなんだから……)
気づかれないように、
こっそり隣に視線を向ける。
すると青い瞳もこっちを見ていて、
ドキッ・・・
思わずパッと視線を外す。
胸が落ち着かなくて、でもふわふわして、うるさい。
「っ///折角だしさ!帰りにこの前出来た、クレープ屋寄ってかない?」
たったそれだけ、
上機嫌になる単純な私。
(政宗もこっち見てっ///)
軽やかに振り返り、後ろ向きに歩きながらひまりに声をかける。
「でも、怒られないかな?皆んな、まだ学校で準備して……」
「重たい荷物持つんだから、買い出し班の特権、特権!気にしないのっ!」
「お前な。少しは気にしろ」
ピンッ!
横から飛んで来たデコピン。今日は前髪をヘアピンであげてるから、オデコ剥き出し状態。手加減してくれてるのはわかっていても、可愛くない私は、オーバーリアクション。
「痛いわね!」って、文句言いながら違う意味で熱くなるオデコ押さえた。
ついニヤケそうになるから、
……ほんと困る。