第46章 「恋の和歌集(10)家康様編」
「邪魔なの?私達にとっても……」
もちろん、家康君にとってもね。
(家康にとって……も……?)
「あんたが引っ付いてたら、彼女作りたくても作れないでしょ?」
好きな子がもし、いても。
その言葉が胸を突き刺す。
(私が一緒にいるから……?)
そうなの?
だから、今まで彼女作らなくて……
好きな子いても……
私はキュッと唇を閉じ、スカートのポケットに手を入れる。中に仕舞った二枚のメモ用紙。
さっき先生から貰った、二人の課題で後で渡そうと思ってた。
あの時、和歌を政宗はすぐ選んで、
ーー自分にピッタリなの、普通にあったし。
家康もすぐ選んだ。
(二人共、好きな子が居て……)
見ちゃいけないと思って、中身は見てない。
だから、どんな和歌を選んだのかは知らない。
けど……
けど、きっと素敵な……
黙り込んだ私を見て、築城さんは満足そうに微笑み肩から手を離す。
「今日はコレぐらいに、しといてあげる」
耳元に掠めるようにそう呟いた。
「ちょっと、あんた達!姫に何してんの!?」
その声に反応して顔を上げると、副部長がこっち向かって走って来るのが見えて、
「……行くわよ」
築城さん達は、そそくさと去って行った。
「今の子達、徳川君の!?」
去って行く背中を見た副部長に、何してたのかと尋ねられて……私は誤魔化すように笑って見せる。
「ちょっと話をしてただけです」
「何言って!今のどう見ても……まさか初めてじゃないのね!?」
肯定も否定もせず、私はただ瞼に影を落として、
「……お願いします。家康には黙っていて下さい」
心配掛けたくない。
家康は絶対に自分を責めてしまうからと伝える。
だから、言わないで欲しいと何度もお願いをすると、副部長は何かを考えるように暫くの間、口を閉ざし……
はぁ……。
と息を吐いた後、解った。と言って何処も怪我してないかと、優しく心配してくれた。