第217章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(4)弓乃編
放課後デート。
まさにそれは、高校生の憧れ。
学校帰り制服着て。他愛のない普通の会話してさ。さり気なく手とか繋いじゃって、寄り道しながらいっぱい笑い合うとか……
普通に憧れる年頃。
まぁ、今日は放課後デートなんてじゃなくてただの買い出しだけど。そこは気にしないでおこう!
「まずは!業務スーパー屋さんに行って、材料の買い出しだね!」
「張り切るのは良いけど。必要ないものまで買わないでよ。予算決まってるから」
「ふふっ。ちゃんと気をつけます」
「どうだか。ひまりのことだから。 アレもコレもってかごに入れそうだけど」
「もうっ!まだ、怒ってる〜」
後ろから聞こえてくる、
ラブラブ会話。
(って言っても。本人達は、自覚ないだろうけどさ。……ほんと、仲良いよね)
前を向きながら、
背後の声に耳を寄せる。
ぶっちゃけ羨ましいのが本音。
美男美女のお似合い幼馴染カップル。
それこそ、恋愛少女漫画の王道設定みたいな二人。
ひまり達の放課後、買い出しデートの邪魔をする気なかったけど。誘われた時、ちょっと悩みかけ今回だけは遠慮なく便乗。
「クスッ。ほんと、仲良いね」
転校生くんも一緒だしね。
まぁ、ひまりが神木くん誘っているのを見た時の徳川は、こっちが寒気するぐらい顔引きつってたから……直視出来なかったけど。持ってた金槌が一瞬、凶器に見えるぐらい殺気オーラ全開で。
(うーん。あれはやばかった)
思い出した瞬間。
ぶるっと身体が震えるぐらい。
「ってか。男三人いる?政宗がいたら二人分ぐらいになるんだけど」
「信康くん。この辺りに買い物来たことないって言ってたから!それに、家康だっていっぱい荷物持つより良いでしょ?」
その会話には、さすがの私も苦笑い。
今も超不機嫌そうだけど。ひまりの鈍感お人好しは、そう簡単に治らない……ってか、そこはそれで良いところだしね。私はそんな所が普通に好き。