第216章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(3)
文化祭前日の朝__
早朝に集まり会議室にて、信長はただ静かに佐助の報告を聞いていた。
円になるようなテーブル配置と椅子。一見、大企業の本格的な会議前のように、秀吉、光秀、政宗、三成も座り緊張感を走らせ、口を固く結び、耳だけを集中。
「昨晩、彼の後を追いました。調べた所、花ノ天女神社の一人息子。ご両親は既に他界されているようです。祖父とあの神社で二人暮らしている様子」
今はまだ、そこまでしか調べがついていないと、佐助は話す。そして、眼鏡を中指でグッと押し微かに眉を崩した。昨晩、確かに話し声が聞こえ、茂みから様子を伺ったが信康の姿のみ。不信感を抱いていた。
「そこは確か、野外活動の帰りに寄った神社では?」
「真実の鏡か何かあった場所、だよな?」
三成と政宗は矢継ぎ早に質問を投げかけ、それに佐助は静かに頷く。あの神社は戦国時代から江戸時代にかけ、天邪鬼な神が崇められていたと、いわれのある場所だと説明。
「三つの神器の一つ、真実の鏡はあそこに祀られているものだ。そして、石碑に埋まっている石が約束の玉だと、俺は睨んでいる」
信長は、ひまりがこの学園に入学してから始まった不可解な現象。新月に現れる女のことをこの場にいる者には話を既にしてあり、その前提で……
ある日の晩のことを、口にする。
「永遠の剣を探して欲しい。それしかさんざん口にしなかった女が、一度だけ違う言葉を口にした……」
ーー石碑、に……翡翠、石が…三つ。
秀吉がそれはいつ頃かと尋ねれば、信長は夏休みに入る前日の新月の夜だと話す。
「クッ。確か、終業式の日。石碑の前で、戯れていたな」
「その時に、家康が髪飾りを贈っていたのであろう」
次の日からひまりは、
髪に欠かさず付けていたからな。
信長は、そう真剣な物言いをした後。
手の甲で顎を二、三度撫で、
襟元に手を伸ばし、赤いネクタイを緩めた。