第215章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(2)
数秒後に、ぬくもりが消えた唇。
視界の先でスロー再生されたように、家康の顔がゆっくりと離れていく映像を目で追って……
(い、ま……)
思考回路が追いついた瞬間。
家康がフッと口元を緩めるのを見て、心臓の鼓動が大きく跳ねた。
(い、い、今、キスしたぁ///)
私は、金魚が水面で口をパクパクさせている同じ状態に陥る。
何で!?何でいきなり!?
酸素が足りないみたいに、必死に息を吸い込む私の気も知らないで、家康は軽く笑みを浮かべた後、すぐに平然とした顔に戻す。
スッと視界は、
横顔に切り替わり……
後ろから肩を抱かれ、髪をくしゃりと、揉み込むように掴まれて……
「……こうゆう、関係」
耳に届く、まるで挑発するような声。
今度は、完全に頭が混乱して固まる。
「へぇ……それは、残念」
え?残念?
信康くんの発言に、
ようやく頭が動きかけた時。
「やっぱ、キスしたじゃねーか!」
「くっそーっ!さすがに、黒板横では予想外だったぜ!」
「きゃーっ!ごちそうさま!」
(穴があったら入りたい……///)
静かだと思っていた教室の中。それは皆んなが意図的に作り出した空間だったことを知り、もう半泣き状態。ゆっちゃんと政宗は、窓際でニヤニヤしてるし、チャイムは鳴るし……
くるっと後ろに向いて、
「もう///ばかばかばかっ///」
「ちょ!暴れすぎ!別に、気にすることないし」
「私は気にするのっ///」
家康の胸をトントン叩く後ろで、
「ってか!私達が校内案内するよ!」
「昼休み!じっ〜〜くりね!」
クラスの女の子達が、
信康くんを取り囲む声が聞こえた。