第215章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(2)
休み時間___
先生は教室から出て行く前、私にある事を耳打ち。皆んなが名前を書き終わったら、座席表を壁に貼っておくように頼まれ……黒板横の壁に移動。
画びょうを四つ持って、まじまじと座席表を見つめる。
窓際の後ろに固まった、ゆっちゃん、政宗、そして……【徳川家康】の名前を見てつい飛び出した溜息。席替えぐらいで一喜一憂してても仕方ないのはわかっていても、ちょっと寂しいのが本音。
(早く、これ貼って皆んなの所に行こう!!……えっと、これぐらい?でも、先生達が見やすいように、ちょっと高めに……)
つま先をツンと立てて、一生懸命背伸び。平均より5センチぐらい足りない身長。皆んなは女の子は小さい方が可愛いとか、慰めてくれるけど、この5センチが意外と不便な時もある。
「ん〜〜もうちょっ……」
ぷるぷる震える腕。
画びょうを持った指先まで、その振動が伝わり、右上の角に上手く刺さらない。
(あと……っ…)
画びょうの尖った先が、
やっと少し壁に刺さり掛けた時。
ふわっ。
吹き抜ける
春の風みたいな
淡い香りが鼻について……
「……ほら、貸して」
手の上に手が添えられて……
広がる背中にあったかいぬくもり。
トクンッ。
(え……)
その声に、心臓だけがいち早く反応して、ドキドキ鳴り出して……頬にかかる柔らかいお日様の色の髪。
(家康……)
ゆっくりと顔を動かそうとしたら、
頬と頬がぶつかる。
「……っと。子鹿みたいに、ぷるぷる震えて、何してんのかと思ったら」
「ぷるぷるって///ちょっと届かなくて、頑張ってただけだもんっ///」
「はいはい。後ろから見てたから、それはわかってる。……俺がするから、貸して」
家康の手の平が、背後から胸の前に。
(身体くっつき過ぎだよ///)
残りの画びょうを渡すと、意図も簡単に四ヶ所に刺して、座席表を壁にくっ付けた。傾いたり、ズレたりしてなくて几帳面な所がこんな所にも出るんだなって、感心していると……
サラリとまた頬にくすぐるように、髪が上からかかって、思わず肩が跳ねる。