第214章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(1)〜
あれ?
不思議に思っていると……
「あ!私も落としたみたい!ひまりの好きな方で良いよ〜。私も番号見る前だったから、分からないし」
「う、うん」
そうは言ってくれたけど、何となく自分の引いてない方のクジを選ぶのには気が引けて、つい指が躊躇してしまう。
(どうしよう……。二人共、番号見てないなら、中の数字を見てもどっちか分からないよね)
こんな事なら、
早く見ておけば良かった。
そう悔やんで肩の力を、ストンと落とした時。視界の先で、すんなりと細い指が優雅に動くのが映り込む。
カサリと微かな音を立て、私から見て右側に落ちていた紙が、ゆっくりと上がり……
「ひまりのは、こっち」
それが、目の前に差し出された。
家康と同じ口調。
でも制服のズボン、シャツ、ブレザー、赤いネクタイ……視線を順番に追っていくと赤い瞳がじっとこちらを見ていた。いつまでも受け取らない私に、信康くんは目を薄っすら細める。
何で私のがわかったの?
そう口には出さなくても、表情に出ていたのかもしれない。目が合った数秒後に、落ちる所を見たからと言われ……
今度こそ紙を受け取った。
「あ、りがとう。あ、あの……」
色々と聞きたいことはあった。
でも、いざ聞こうと思うと何から聞いたら良いのか、わからなくなって。新学期でもないこの時期に、転校。何か事情があるのかなと思い、下手に詮索したり、触れたりするのは良くない気がする。
そう思って、
口をもごもご動かしていると……
「皆んな移動。始めたみたいだよ」
ガタガタと皆んなが机を移動させる音。そこでやっと気がついて。慌てて番号を確かめ……
(三番………)
窓側から遠い、廊下側。
中の数字にがっかりして肩を下げた。