第212章 『意地悪なangel』
放課後の教室。
ピチッと隙間なく閉まったはずの窓から、何故か冷気が流れ込む。
それは……
一人の男が横抱きに眠る姫を大事に膝の上に乗せ、もう一人、白衣を着た男が、姫のひざ、太もも、おしり、おなか、胸、腕、肩、首の順番に手をかざして、妖しげな動作をしているからか……
定かではないが。
「先生。いくら直接、触れてないからとはいえ。やめて貰えませんか?その、あやしい手の動き」
「静かにしていろ。……そろそろだ」
何が?家康は口には出さず眉間に皺を刻み、その表情を作る。光秀は何かを感じ取ったように、切れ長の瞳が妖しげに光らせ、バシバシの睫毛を揺らし……そして、何かを吹き込むようにひまりに向かって息を吐いた。
「良いか。心で感じたまま行動しろ。今、俺はお前の脚を触っている」
「は??」
光秀の唐突な台詞に、家康は口を半開きにして目を白黒させる。確かに色白の透き通った手はひまりの紺ソクを履いた脚の上に……しかし、どう見ても宙に浮き触れてはいない。
「家康。少しはその間抜けな口を塞いだらどうだ?……見てみろひまりを」
「んっ……」
ピクンと腕の中で小さく跳ねる身体。
目を閉じたままひまりは、まるで、本当に触れられているかのように吐息を零し、くすぐったそうに片脚を曲げる。
(嘘でしょ……)
家康は、狐につままれたような思いで、その姿を凝視。
「ほら、ゆっくり上に向かって触れ……」
「やぁ!」
まるで、中に手が滑り込んだような反応。スカートを押さえ、恥ずかしそうに頬を染めるひまりを見て、家康は途端に顔を歪ます。
「何する気ですか!?」
「クッ。暗示にかかりやすいか、試しただけだ」
「ひまりで遊ばないで下さい!」
「遊んでなどいない。少し揶揄っただけだ」
光秀は愉快そうに笑い、
本番はここからだと告げる。