第212章 『意地悪なangel』
ひまりは頬を包んでいた手を、時間をかけ、ゆっくりと下ろす。そして深刻そうに眉を寄せ、今度は俯き……キュッと膝の上で小さな拳をつくり、意地らしくスカートを掴む。
そして、訴えるように顔を上げ……
決して辛いわけではないと、
大袈裟に首を振り……
「……ちゃんと教えてくれるから。ただ……あんなことを要求されたりっ!あんなこと言われたらっ!わたしっ」
もう、どうしたらいいかっ!
声を張り上げる。
三成は心を打たれ、目を閉じ……
「そうですか。あんなことや、そんなことを……」
「あんなこと」「そんなこと」の部分を強調して、静かな教室に声を響かせた。
「ひまり!な、な、何、言って///た、確かに最近、色々とまんなくて……って!俺こそ何、言って!」
狼狽える家康。しかしひまりは、隣で泣き崩れるかのように、机に突っ伏すと……
「わたし…わ、たし……っ。だんだん不安になって……きて……」
不安を口にする。
三成は天使のような微笑を浮かべ、慰めるように震える肩に手を置き、落ち着いた声で「よく話してくれました」と、何度も何度も親身になって頷く。
家康はその光景に為すすべもなく、暫くこれは夢なのか。それとも、本気で自分の愛情表現が、ひまりの人格を変えるほど追い詰めてしまったのかと……
「家康先輩。大切な彼女を救えるのは、貴女様自身です」
三成に手を急に握られても、
全く動けず、ショックで瞬きすらも忘れる。普段ならあり得ない光景だ。
「わ、私は頑張って……っ、一生懸命、家康の期待にっ……」
隣から、か細い涙声が聞こえ……
「ご、ごめん!まさか、嫌がってるとは思わなくて!これからは……っ!」
家康は大切な彼女の本音を聞き、弱り切った表情を浮かべ、必死に謝って取り繕う。