第212章 『意地悪なangel』
そしてまず、
始まったヒアリング。
そう聞くと聞こえが良いが……
三成はエンジェルスマイルを崩し、スッと目を細め、尋問を始めるかのように自分のピアニストのようなデリケートな長い指と指を絡ませ、両肘をつき、顎を乗せ……
「ひまり先輩。さぁ、貴方の心を開いて下さい。ゆっくりと……ゆっくりとで構いません……」
暗示をかけるように、
間延びした落ち着いた声を出す。
「心を………?」
目をパチリとして、ひまりは自分の胸に触れる仕草をする。
「そうです。家康先輩の日頃の不満、嫌なところ、うっぷん……多いに吐き出して下さい」
「ちょっ!何言って!!」
「しっ。今は、静かにして下さい。ほら……ひまり先輩。ゆっくり、ゆっくり……」
家康はムスッとしてそんなのある訳と、言いかけた時。隣に座っていたひまりの首がカクンと落ち……
「実は……。最近、家康……。大切にしてくれないの」
「へ!?」
「家康先輩」
三成は口元に人差し指をあて、一瞬、愉しげな深い笑みを浮かべ、家康はクッと喉を詰まらせる。内心、こんなに大切にしてるのにと、言いたい所だが、もしかしたら変貌した理由に繋がるかも知れないと、諦めひまりの次の言葉を待った。
「大切にですか?」
「うん。そ、の///最近はあ、あの///……アッチの方が凄くて///」
(なっ!!///)
ひまりは、長い髪を揺らして赤い頬を両手で包み、チラッと家康を見る。
今のは幻聴かと思うぐらい、
完全に心ここにあらずな状態の家康。
開いた口がもはや塞がらない。
「アッチ……ですか。お辛かったですね」
三成はわかっているのか、わかっていないのか。どっちとも取れない、表情を浮かべ、うんうんと頷き、声だけは心底同情したように落とす。