第212章 『意地悪なangel』
黒板に書かれた、
文化祭の模擬店案。
コスプレ喫茶、コスプレ写真展、コスプレお化け屋敷……
「結局、コスプレばっかじゃねーか」
「いいじゃん!楽しそうで!」
ひまりが家康の隣に座ったことで、空いた席。政宗は弓乃に半ば強制的にその席に座らされ、わいわいと模擬店案について騒ぎ声を上げる中……
家康は、
完全にパニックを起こしていた。
(とりあえず。今のうちに、考えるしか……)
黒板をじっーと真剣に見つめるひまりの横顔を、チラッと見てすぐに机の上に肩肘を立て、ひたいを手の平をあてる。
必死に頭を整理して、どう考えてもひまりがおかしくなったのは、石碑に頭を打ち付けてからだと考え、必死に今まで読み漁った医学書の中に、当てはまりそうな症状を一つ、一つ消去していく。
(記憶喪失……でもない。多重人格、二重人格……それなら普通、生まれ持ったもので……頭を打ったのが原因には、繋がらないし……)
あれこれ考え……頭を悩ます。
何より一番気になるのは、
自分限定だということだった。
(ってか。やっぱ、気のせい……)
そう思い込みたい。
ふと、家康は隣から突き刺さるような視線を感じ……
目線だけ動かせば……
無言で自分の方を、
ひまりが静かに見ていた。
そして、視線が合った瞬間。
ゆっくり、
ピンク色の潤った唇が動く。
キ、ス、し、て。
(っ!!///)
がたんっ!!
「ほぉ。貴様が立候補するとはな」
「へ??」
「ふふっ。先生。私もお願いします」
ひまりは、手を上げる。
家康は訳も分からないまま、文化祭実行委員と書かれた文字の横に、自分の名前とひまりの名前が書き込まれていくのを、放心状態で見つめていた。