第210章 『angelの誘惑』前編※R18
よりよって、俺が弱ってる時に……
こんな時に限って、サービス精神を見せる。こっちが病人だと思って安心してるのか……単にいつもの無自覚、無防備ひまりなのか……。
(頭まで痛くなってきた…)
「これね!さっき、おばちゃんに貰ったの!ほら!もうすぐハロウィンでしょ?ゆっちゃんと、お揃いで仮装するって話したら、二枚あるから、良かったらって……」
捲し立てるように早口で、説明。
話によると、母さんが看護師時代に着ていたナース服をさっき、貰ったらしい。けど、ひまりが着ているのは新品で、昔にサイズを間違えて購入した物。
だから、二枚ナース服があり…
早速リビングで試着して、そのまま俺の部屋に来たらしい。小春川と揃えでこれを着て、副部長の家に押しかけると……ひまりは、嬉しいそうに話す。
「おばちゃんね!今、買い物に行ってて。あんまり家康の容態が良くなかったら病院行くようにって。でも、思ったより元気そうで良かった!」
看病しにきたんだよ?これ着たままのが、雰囲気でるかと思って。
聞いていると思わず笑みが浮かびそうな程、可愛い理由。ナース服を着てる理由だけ、は。
「変じゃないかな?ちょっと、キツイ気もするけど、大丈夫だよね?」
(本気でこんな格好して……)
頭がガンガン打ち付けられたように、
痛みが増したのは……
発熱のせいか。
それとも、
完全に、頭に熱が回ったせいかも。
「あ!コンビニで、ヨーグルト買ってきたんだよ?食べる?」
ベッドから降りて、カザゴソと袋からヨーグルトを取り出すひまり。
「……そんなの着て、電車乗るつもりだったわけ」
俺はその背後から、ボソッと呟く。
「え?だって、電車乗らないといけない……って。どうしたの?恐い顔し……きやぁ!!」
振り返ったひまりを引き寄せ、
「……早く、看病して」
咳はない。けど、喉がいがいがするせいか……
思ったより、掠れた低い声が出る。
荒治療で風邪なんか、飛ぶぐらい。
とことん、誘惑して貰うから。
覚悟しなよ。