第210章 『angelの誘惑』前編※R18
ふと、目が覚めたのは15時45分。
壁側の方に身体を向け寝ていた俺は、ぼんやりとした意識で手を伸ばす。携帯で時間を確認をすれば、またすぐに浅い眠りに襲われ……
(……まだ、寝よ)
しかし、
カサッ……。
突如、背後で物音が聞こえた。俺はワサビでも走り回ってるのかと思い、さぞ気にもせずに瞼は閉じたまま。ただ、耳だけは集中。
近くで、
ピリピリと何かを剥がす音。
俺は、それに誘われるように……
音がする方向に寝返りを打つ。
(……着替えるの面倒くさい)
気づけば全身、汗まみれ。じっとりと嫌な感覚が肌に伝わり、汗で衣服がべたべたしているのが自分でもわかる。前髪は、そのせいでひたいに重くへばり付いていたが……
一瞬で外気を浴び、
(……冷たい)
ゼリー状の何かが、代わりに張り付いた。
布団から出した手。それをひたい乗せれば、伝わってきたのは、弾力のある布の手触り。
そこで俺は漸く、
目を薄っすら開ける。
起きる前に見ていた夢の余韻が、
まだ微かに残る中……
「あ。起こしちゃった?」
その夢を再現したように、
視界に、白衣の天使が映り込んだ。
(なっ!!)
その瞬間。
一気に目が覚め、
驚き過ぎてビクッと体が反り、ガバッと布団を剥いで起き上がる。
「な、な、なっ……」
気が動転し過ぎて、
声すらまともに出てこない。
夢か現実かさえわからず、全く状況も飲み込めない中……
「ほら。ちゃんと寝てないとね?」
白衣の天使。…いや……薄いピンク色のナース服を着たひまりが……
「私が、側にいてあげるから」
小さい子供をあやすような甘い声を出して、俺の体に触れた。