第210章 『angelの誘惑』前編※R18
錠剤を口の中に放り込み、ミネラルウォーターでそれを体内に流し込む。
咳は今のところ出ていないが、
微かに喉に違和感がある。
変にこじらす前に、
大人しく寝るのが、回復は早い。
(ひまりの笑顔を見たら、すぐ治りそうだけど)
ベットに転がり、着替えをするか寝間着のままでいるか……朦朧とした意識で適当に考える割に、ひまりへのメール内容だけはしっかり頭をフル回転。
(休む。だけだと、何で?ってなるだろうし、風邪。って言えば無駄に心配かけそう……)
無難な所を考え、下手に心配させないように、文書を打ち込む。
『普通に体調良いけど、微熱あるから念の為に学校休んどく。……暗くなる前に帰りなよ』
携帯画面を確認。
(……これなら大丈夫か)
最後に、送信ボタンを押した。
それから暫く、
ぼっーとしている内に薬が効いて……
『ほんとに大丈夫?ゆっくり、寝て休んでなきゃだめだよ?学校終わったら、行くね』
ひまりから返信が来る前に、
俺は眠りに落ちた。
深いような浅い眠りの中、
見たのは、懐かしい夢。
夢の中でも風邪をひいていた、小さい頃の俺。そのベットの隣で、心配そうに眉を下げ……
ーーペタペタ……はい!
ーーごほっ、ごほっ。あ、りがと。
ーーはやく、元気になってね!
ひんやりと気持ち良い、冷却シート。それを俺のひたいに貼って、笑ったのは……小さな白衣の天使だった。