第44章 「恋の和歌集(8)信長様編」信長様side
「……覚えておけ。赤点など取れば、これ以上の熱を与えるぞ」
あと、男心を少しは学べ。
俺がそう言うと、分かったのか分かっておらんのか……ひまりはブラウスを掻き合わせ、コクコクと素直に頷いた。すると、安心したのか目から涙をポロポロ溢し……
グズグズッと鼻をすすり上げた。
「怖かったか?」
「……だって先生、いつもと…ちがったから」
でも、先生は絶対嫌がることは無理にしないから。
そう思ってたからと、表情とは打って変わり可愛らしい言葉を吐くひまり。
(ったく、初々しいヤツだ)
言っておくが、間違いにも優しい男ではないぞ。
俺はちょっと待っていろ。と言い残し、職員室に戻り机からある物を取ってくる。
「彼奴らに伝えろ。貴様らの想いなど俺は要らんとな」
「これ……家康と政宗の課題?」
「それぞれ、想う女は同じであっても選んだ和歌は別々。ふんっ。中々、興味深い」
「???」
キョトンと不思議そうな顔をし、課題をジッと見つめるひまり。
折り畳んでいて中は見えぬが……
まぁ、見た所で気づかぬであろう。
まさか自分の為に、選んだ和歌だとはな。
「そうだ。貴様、昨日見ておった割に何も聞かんだな。……女のこと」
背を向け乱れた制服を直すひまりに、俺はそう尋ねた。
すると、プライベートな事だからと、呟く声。
俺はその言葉がやたらと癇に障り、
後ろから引き寄せると、
「……少しは気にしろ」
絶対見せれぬ顔を隠した。