第210章 『angelの誘惑』前編※R18
枕元で鳴り出す、携帯のアラーム。
手探りでそれを止め、体を捻り、
うつ伏せから仰向けの体勢に変える。
(……何か、目覚め悪い。やっぱ、ひまりの声が一番……)
テスト期間の今、朝練はない。
だから、毎朝かかってくる天使の目覚まし声は、その間、休業中。
朝起きて、軽い目眩。
また左目が痛むのかと思い、触れば熱い。自分の吐く息も熱いし、額も……逆上せそうなぐらい熱いことに気づいてようやく……
自分が発熱していることを悟る。
(あっつー……)
ベットから起き上がり、リビングに向かう。体温計を救急箱から取り出して、ソファに崩れるように座れば、母さんが異変に気付いたらしく……キッチンから、声を掛けてきた。
それと同時に
ピピッと電子音が鳴り、表示された数字を見て、俺は熱い息を吐く。
「熱、どれくらいあるの〜?」
「七度五分。……普通に学校行けそうだけど、休んどく」
テスト期間中の今。
ひまりに移すのはマズイ。会ったら絶対、普通にキスしたくなる。離れてるのも無理。その辺は、自分が一番理解してる。
万が一、テスト当日に風邪を引けば、日を改めて別室でテストを受けるのが必要に。そうなると、最悪な自体が発生。
特別室で、担任の鬼と二人っきり。その状況でテストを受けるひまりの姿が脳裏に浮かび……
(……無理)
ぼっーとする頭で、
その先を考えただけでも危険。
(とりあえず、ひまりに連絡だけして寝よ)
急な温暖化差で体調を崩したのか、この前のデートでひまりにパーカー着せたくて、シャツとカットソーだけで、フラフラ歩いていたのが原因かは、知らないけど。
どうせなら、明後日に引けば良かった。なら、三成と図書室の受付せずに済んだのにと、俺は悔やむ。冷蔵庫からミネラルウォーター、救急箱から薬。
それを持って部屋に戻った。