第209章 『デートって何?』後編
くねくねとした道を上り、黒金門跡、二の丸跡をさらに進み、本丸跡、天主跡に到着。私は、そこから一望出来る景色に目を奪われ……暫くの間、言葉を失う。
あの辺がうちかな?
あれ、もしかして学園?
自分達の住む町。まるでジオラマみたいな小さな町を見下ろしていると……
「……あの辺りがうちで。あれが学園……とか。考えてんの、バレバレなんだけど」
風が吹いたように、そっと……
優しく体が包まれた。
図星をつかれ、何で表情も見てないのにわかるの?って、肩に回された腕を掴んで、正面を向いたまま聞く。すると、家康は「教えない」素っ気ない返事。
でも、体温も声もあったかい。
標高がそこまでなくても、山頂は空気も澄んでいるかわりに、気温が低い。薄っすら掻いていた汗が一気に引き、肌がひんやり冷たくなっていた。
「くしゅん……っ」
寒いせいか、周りの木々から飛ぶ花粉のせいか。思わずくしゃみが出て、両手で鼻を押さえる。
すると背中のぬくもりが一瞬消え、代わりにパサっと肩に、何かが乗る。それが、家康が腰に巻いていたパーカーだとわかった時には、また胸のあたりに腕が回っていた。
「ありがとう」
「俺的には、後でフードも被って欲しいけど」
フード???
何でだろう?と、不思議に思いつつも後で聞けばいいかと、たいして気にも留めず、視界にみどりの絨毯のように広がる田園と、小さくなった町、湖を映す。
「二人はここから、城下町を見下ろしてたのかな」
「そんな暇、なかったかもよ?」
「キスする時間はあったのに?」
ちょっとだけ、文句を言うような口振りでそう言うと、家康は都合悪そうに、コツンと私の肩に頭を乗せた。