第209章 『デートって何?』後編
ミニスカートの上を、
滑り出す指先。
ひまりはそれを咄嗟に止めようとするが、身動きがとれない。右手は家康の左手としっかり繋がったまま。石垣に押さえつけられ……
「……ちょっとだけ」
その声が力まで奪う。
ちょっとだけとか言いながらも。家康は思う存分。イチャつけることに、今更ながら気づいた。……と、言うより少し前に気になっていた気配がいつの間にか消え、募らせていた警戒心が消えた。それにより、ひまりに全部の神経が向けられ、感情が高ぶり……
「俺なら我慢できない。城に向かう途中も、戻る途中も。ひまりが隣にいたら……」
例え、戦国時代だろうと
真昼間だろうと、関係ない。
愛する者が隣にいれば、無条件で想いは溢れたはずだと……家康はそう思う。
「触れたくなる」
真っ直ぐな瞳が捉える。
「……いえや…す」
視線さえも捕まり……降り注ぐキスは体の全ての力を奪うぐらい、激しい。
完全に力が抜けてしまい、家康に支えられ自由が効かない身体。それでも、ひまりは声を張り上げ全力で止める。
「もう!触っちゃだめっ///」
「どんな風に二人が過ごしてたか、気になるんでしょ?」
「私が言ってたのは、どんな風にデートしてたのかなって意味で…っ………」
「だから、これがデート」
平然と調子の良いことを、言ってのける。
しかし……
やはり、ここは安土城跡。
突然、影が落ち……
雲行きが怪しくなる。
「いっ、…いえやす」
ひまりは上擦った声で名前を呼び、自分の首筋に顔を埋めている、家康の肩をツンツンと突く。
「……何?鬼でも見たような顔して」
頭を上げ、眉を寄せ……
後ろに首を動かすより先に……
「場もわきまえず。昼間から盛る馬鹿に……戦国時代。どんな仕置していたか、俺が教えてやろう」
血の通わない声が……
背後から届いた瞬間。
「……最悪」
一気に青ざめた。