第209章 『デートって何?』後編
昼間から見事に落ちた雷。
言い渡された罰。テスト期間中、一日だけ図書室が解放される日があり、その時の受付係を、図書委員の三成とすることだった。
下手な罰より、
家康からすれば重い罰に違いない。
「貴様ら。成績だけは良いからな。テスト期間中でも、何の問題もない」
受付しながら勉強するなり、その辺は自由にしてもいい。と、信長は告げる。
「……はぁ。何で三成と二人で。……ブツブツ……」
さっきの姿とは一変。
その場にしゃがみ込み、ぶつくさ文句を唱え続ける家康。ひまりはその姿に苦笑いを向けた後、信長がここ理由を尋ねた。
「織田信長が安土城跡にいても、不思議ではないだろう?」
「ふふっ。そうですね!先生、お一人ですか?」
「……今は、な。……用は済ませた。今から戻る所だ」
信長はそびえ立つ石垣に、視線を向け、フッと軽い笑みを浮かべたのを見て、ひまりは首を傾げる。
その石垣はさっきまで家康に迫られ、背中を預けていた場所。
「この石垣。何かあるんですか?」
「知らぬまま、ここで戯れあっていたのか?」
逆に聞き返され、ひまりはキョトンと瞬きを数回繰り返す。家康は信長の言いたいことが分かり、バツが悪そうに顔を背けた。
「馬鹿は分かっていたようだな。……この石垣の上に、かつて徳川家康邸があったと言われている」
優しい眼差しを向け、
「しかし、織田信長と徳川家康は同盟を組んでいた。家臣でもない者の屋敷が何故、城内にあるのか……色々な説があり謎が多い」
そう、説明をする。
「そうなんですか……。歴史って、本当に奥が深いですね」
住んでいたかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
歴史は、新たな発見や発掘で信憑性が高まったり、説が変わったり、時を少しずつ刻みながら……伝わっていく。
「学園に伝わる書物の歴史。私達が授業として伝わる歴史……いったい……」
ひまりはそこまで言いかけて、口を固く閉ざす。その先は、口にしてはいけない。そんな気がしたからだ。