第209章 『デートって何?』後編
まだまだ先が見えない、石段。しかし、部活で鍛えた筋力のお陰で、二人の足取りは至って軽い。
両側は緑と石垣に挟まれ、時折、家康の解説を聞きながら、先へとゆっくり進んでいた。
「あ!石碑に『羽柴秀吉邸跡』って、書いてあるよ!あれ?羽柴?」
「確か、上段には『豊臣秀吉邸址』って、なってたはず」
二人は大手道左側、
上段の虎口から敷地に入る。
「この復元図を見る限りでは、かなりの大御殿」
「凄ーい!家来さん達もここに住んでたのかな?」
(小学校の時も、似たようなこと言ってたような)
ひまりが歓喜の声をあげ、復元予想図を穴が開くほど見る。その隣で、家康は笑っているような、いないようなあやふやな顔で、パタパタと服を摘んで風を通す。
「まだ半分地点くらいか。……手、ちょっと離すよ」
家康は、そっと手をはなして素早くパーカーを脱ぎ、腰に巻いていたシャツの上から更に巻きつけ、キュッと袖を絞る。そして、ロンTの袖を肘より少し長めの所まで、捲し上げた。
「ひまり、暑くないの?」
「う〜ん。ちょっと、体温上がってきたけど。風もあるから、ちょうどいいよ?」
二人は再び手を繋ぎ、大手道に戻る。
それよりも、何方かと言えば繋ぎっぱなしの手の方が気になる。さっき、家康がパーカーを脱ぐ時に一旦手が離れ、その隙にひまりは自分の汗ばむ手を拭き取った。
しかし、すぐにじっとりとした熱の感触が手に伝わり、そこに視線を送り心配していると……
家康はそれに気づく。
「……もしかして、嫌?」
繋いだ手を、
お互いの真ん中に持ち上げた。
「う、ううん!嫌じゃないよ!……ただ、汗掻いちゃったから……家康のほうこそ、嫌じゃ……わぁっ!」
家康は喋り終わる前に、持ち上げた手を後ろに引き、身体ごと引っ張る。