第209章 『デートって何?』後編
懐かしい。
そんな気分ではなく……
そこから空間が違う。
そんな表現が、一番しっくりきた。
家康とひまりは、無言で顔を見合わせ、爪が食い込むぐらい、絡ませた指に力を込める。
まっすぐに伸びている幅広い道。
大手道を暫く歩き、関所のような場所に到着。二人は料金を支払い、入城。
そして、ゆっくり一歩、一歩……静かに歩き、大手道口正面に立った。
「すごい……。迫力あるね」
昔に来た記憶。
薄っすらでも残っているかと思ったが、初めて見たように唖然としてひまりは呟いた。石で出来た大階段に圧巻。
「……発掘でほとんどが復元されたとはいえ、当時、本当にこれがあったんなら……驚いただろうね」
家康も向かって右側の巨大な石垣には、圧倒される。
二人は格段さがある石階段を登り始め、天守を目指す。当時は大階段の左右には、武家屋敷が立ち並んでいた。
「この石段を、馬で登ってたのかな?それとも歩いて登ってたのかな?」
「……どっちもじゃない」
「ふふっ。徳川家康もこんな風に歩いて登ったり、馬に乗ってお城に向かったのかな?」
「……………」
「……どうしたの?」
急に口数が少なくなった家康。
ひまりは心配になって顔を覗き込めば、ハッとしたように焦点を合わして、何でもないとだけ家康は告げる。
(……気のせいか。さっきから、誰かに見られているような……)
どこからか、感じる視線、気配。
あまり顔を動かさず目だけで、
その気配を探すが……
不審な者どころか、周りには自分たち以外、誰もいない。