第208章 『デートって何?』中編
「家康も一緒に謝ろう?」
「何で、俺が……」
「謝んなくていーからよ。お前のパーカー寄越せ!」
更にヒートアップした三人のやり取り。とうとう女は耐えきれず……吹き出した。
「あ、ご、ごめんなさい」
「こっちこそ、本当にごめんね。せっかくの……デートだったのに」
シュンと、肩も眉も同時に落とす。
「本当に気にしないで下さい。……そ、の///わ、私、幸くんと…一緒に…居れたら、それ…だけで……///」
女は首を大きく振った後。真っ赤になりながら、幸村を気にしてかごにょごにょと言葉を濁す。最後の方は途切れて聞こえなかったが、ひまりには、何が言いたいのか伝わり、そしてその気持ちに共感。
小さな声で「そうだね」と返した後、ふわりと笑う。
好きな人と一緒に居れる大切な時間。
それこそが、デートの本質。場所や状況は関係ない……そう思った。
だからこそ、
「家康!行こう!」
「さっきは、二人を放っておけない。って、言わなかったっけ?」
「だって、心配で。でも、今度こそ、二人の邪魔したら悪いから」
ひまりは部屋から出る前に、自分の着ていたざっくりニットを女に貸そうとしたが、幸村がそれを止める。
「俺のヤツが乾いたら貸す。それまでは、コレ羽織ってろ」
「で、でもっ。これだと幸くんがっ」
「いーって」
「だめっ。今度、練習試合がっ。弓道部のエースが体調崩したら大変だからっ。それに……」
もし、風邪を引いて学校で一日でも会えない日があったら、寂しくて心が風邪を引くからと……。蚊が泣くよりも小さな声で、女は毛布をすっぽりと被りながら、話した。
それが幸村の耳に届いたかは、分からなかったが、仲良く一枚ずつ毛布に包まり、喋る姿を見て家康とひまりも、笑い合う。
デート。それは、
好きな人と一緒に居れる大切な時間。
場所や状況は関係ない。
「もう、変装必要ないから。眼鏡取るよ」
「……取るの?似合ってるのに?格好良いのに?」
(……はぁ)
外しかけた眼鏡。家康は真ん中を指で押して、しっかりと掛け直す。その隣で、ひまりは丸めがねのフレームを持ち、少し下げてクスリと笑った。
手を繋いで……
二人は安土城跡へ。