第208章 『デートって何?』中編
例え恋人同士でなくとも。
恋人同士であっても。
男女のどちらかが、又は両方が、恋を意識しながら二人で会う。
それが「デート」だとひまりは、認識していた。
「お互いのことをもっと知りたい。もっと距離を縮めたい。もっと仲を深めたい。それは、付き合う前も付き合った後も同じ。だから、二人がどんな関係でも、デートするのかなって?」
「それが、不思議?」
「う〜ん……ちょっと違うかな?上手く言えないんだけど……」
ひまりは、ずり下がった眼鏡を指で挟み、しっかりと掛け直して……
家康の正面に向き直ると、
「デートって実は約束した瞬間から、始まってるのかな?って思ったの」
伏せ目がちに話す。
時間、場所を決めて約束。前の晩から、デートに着ていく服装を真剣に選び、好きな人の事を考えながら、一人部屋であれでもない、これでもない。
こっちのが好きかも。
これの方が良いかも。
時にはオシャレ感を重視。
時には、動きやすさや状況を考慮して、悩み悩んで選び抜いて……
なかなか寝付けない夜を過ごしたり、早く明日になるように早めに寝たり。
ひまりは、昨晩の自分の心境を思い出して、今度は口元に手をあてクスリと笑う。
「あの女の子ね。噴水前で身だしなみを何度も念入りにチェックして、そわそわしてたの」
それは、私も同じ。
そう呟き、はにかむ。そして、家康に水面の様にキラキラした瞳を向け、身を乗り出して覗き込むと……「待ち合わせ中だって、ちゃんとしたデートだよ?」ピシッ!と、指摘するように人差し指を顔の前で立てた。
遅行して怒る者もいれば、来てくれただけで喜ぶ者もいる、自分のようにおあいこにする者もいる。
しかし、
デートへの想いは同じ。
「女の子は、好きな人とデートするってだけでドキドキしたり、ワクワクするから……」
それが、不思議!
茶目っ気に、ほんのり頬を染めてひまりは笑う。人差し指で黒縁伊達メガネを、軽く突っつけば……
(っ!!///)
家康は完全にノックアウト。