第207章 『デートって何?』
時計台に片手を付いて、
家康は呼吸を整える前に。
「……ごめん」
眉を下げて謝ってくれる。
(これで、おあいこだよ)
中学の時。私も遅刻したから。
それに、家康は、自分が悪いと思ってる時は言い訳は絶対しない。心から謝ってくれてる証拠。
でも幸のも、アレは言い訳じゃなくて素直なだけなんだけど。
「30分近く遅刻だよ!!ふふっ。幸みたいに寝坊したって言わないんだ?」
「…………寝坊したわけじゃないから。……ってか、何でそこで幸村が出てくるわけ?」
「あのね!実は!」
家康の遅刻の理由も気にならないわけじゃないけど、ちゃんと来てくれて、謝ってくれたらそれだけで十分。
それよりも今は、うずうずしてさっき見た光景を話そうとした時。
「それと。……何で隠れてんの?」
手首を掴まれ、
優しく前に引っ張られた。
「……可愛いから。ちゃんと、見たい」
くるっと緩く巻いた髪。
家康は人差し指を絡ませて、そこに視線を落とすと「ストレートも好きだけど、ふわふわも好き」指先でくるくる弄びながら、口元を緩ませるのを見て……
嬉しくて、
胸がきゅんって鳴る。
朝早く起きて、
頑張った甲斐があったなぁって。
「あ、ありがとう///家康も……」
チラッと私は服装を見て、
「格好良いよ?///」
恥ずかしいけど、ちゃんと伝える。
さっきから……
通り過ぎる女の人チラチラ見てるのは、間違いなく家康。
パーカー手に持って、羽織ってないから、今の格好は大人っぽい雰囲気。いつものカジュアルな感じも好きだけど。
(さりげない感じの着こなし。いつ見ても本当に格好良いから……)
俯いて、このやり取りがいかにもカレカノの「デート」っぽいなって、一人で照れていると……
「……良いよ?」
いっつも、私の疑問文には真似して、聞き返してくる家康。ゆらゆらしたイヤリングを意地悪い声と、くの字に曲げた指で揺らす。
「良いです!///」
そう言い切ると、
ゆっくり家康の顔が近づいて来て……
目を閉じようとしたんだけど。