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イケメン戦国〜天邪鬼と学園生活〜

第206章 天邪鬼の愛〜聴色〜最終章〜




延長戦___

一射目をお互い外しただけで、それからは連続的中。延長戦に持ち越され射る順番が変わり、的も変わった。

一回り小さくなった的。


(これで、終わらせる)


相手が一射目を外し、好機が回る。
左目を閉じたまま。


俺は胸に手の平を軽く添え、ひまりから貰ったお守りの存在を確かめた後……深呼吸をして弓を頭上に持ち上げ、矢をつがえる。

その姿勢からゆっくり引きながら手を下ろして……矢が口元の高さに降りた所で、動きを止め……


弓を引くのでも
引かないのでもない、少しの間。


「会」に入る。
弓を引き絞り、離れを待つだけの時間……人によって異なる。


無心になる者、俺みたいに……
ある想い乗せ、想い人を思い浮かべる者。


ズキズキとまだ残る目の痛み。
集中力を極限まで出して、振り払う。


無心では、
俺の矢は真っ直ぐに飛ばない。



(ほんと、自分でも情けないけど……)



最近度々起こる、目の違和感。激痛。
疲れてるのかと思って、大して気にしてなかったけど。

今日は、痛みが引かない。
医学書で調べても、症状とあてはまりそうな病名はない。



(まぁ。例え、片目が見えなくなったとしても。俺は、見失わない……)




ひまりだけは。



フッと自然と緩まる口元。



シュッ!!



その弦が勢い良く弾かれた時。
その想いも放たれる。


張り詰めた空気。
それを引き裂く刹那……



パァーッン!!


その場の静寂を打ち破る、会心の音。
鮮やかに的の中心に突き立った。



「よしっ……」



俺の珍しく出た声は、湧き上がる歓声と拍手にかき消された。





試合終了後、表彰式を終え……


「家康!!」


真っ直ぐに走り向かってくるひまり。
俺は両手を広げ、待ち構える。


目に焼きつくぐらい見て……



「優勝おめでとう!!」



受け止める。

涙目で満面の笑顔を、腕の中で見せるひまりを抱きしめた。



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