第43章 「恋の和歌集(7)信長様編」
次の日___
私は1限目が終わると、
いそいそと一つ下の階の教室に向かった。
(三成君は……居た!)
相変わらず人気者の三成君。席の周りには沢山の女の子が居て……正直、ちょっと声が掛けづらい。
(う〜ん。どうしよう……)
迷って扉の前でチラチラと覗いていると、三成君とバチっと目が合った。
「ひまり先輩!」
名前を呼ばれた瞬間、一斉にクラスの子達の視線を浴びる。
私ははにかみながら、扉の前まで来てくれた三成君に取り込み中にごめんね?と、言って昨日のお礼を改めて伝えた。
「家康、あれからずっと不機嫌だったんだけど……何かあったの?」
「何もありません。傘をお借りしたので、またお返しに行きます」
(ほんとだったんだ。……家康、ちょっと疑ってごめん)
傘貸したのは真実だと知り、心の中で謝る。
あれ?
三成君のほっぺた、腫れてない?
微笑む三成君の頬が少し腫れている気がして、そう尋ねると
「帰り道、雨で滑ってしまって。大した怪我ではありませんので」
お気になさらず。
(でもバスを降りてすぐ、ほっぺた押さえてたような?)
記憶を辿り人差し指を顎に添えて考えていると、私の手を優しく掴み、心配して貰えて嬉しいです。と三成君は、目を細めて……
「お優しいですね」
「優しいのは、三成君だよ?貴重な時間、私の為にありがと」
「三成君〜!早く〜」
「この問題の続き、教えて〜」
クラスの女の子達が三成君を呼ぶ声に反応して、私は思わず手をバッと引っ込める。
時間取らせて、ごめんね。と謝り、
「ふふっ。三成君、モテモテだね!じゃあ、また今度ちゃんとお礼するね!」
「………邪魔ですね」
「ん?今、なんか言った?」
小さな声で聞き取れなくて首をかしげると、三成君は何でもないと笑う。
予鈴の音と共に、私は教室に戻った。