第205章 天邪鬼の愛〜聴色〜(9)
本殿にて__
拝殿に残った者、信長、光秀、三成、政宗の四人は、秀吉に案内され奥にある本殿に、移動していた。本殿とは、御神体を安置してある社殿。言わば、神社を神様のお屋敷とするなら、本殿は神様の部屋になる。
普段なら、宮司ですら特別な場合を除き、本殿には立ち入らないのだが……
「……祈祷中。何か違和感など感じなかったか?」
稀に出る深刻な声で、
信長は口を開く。
すると、秀吉は思い当たる節があるのか、苦渋そうな表情を見せた。
「違和感と言うより……家康から、普段とは別の佇まいを感じた気がします。表現し難い、そんな感覚はありました」
秀吉がそう答えると、光秀は「佇まい?」と、訝しげに目を細める隣で、三成は「実に、興味深いですね」と、ぽつり声を落とす。
「佇まい……。つまり、かもし出される雰囲気が違ったと言うことか?」
光秀は、顎のラインを指でなぞる。
「雰囲気?俺には、いつも通りに見えた気がしたが……」
「私、ちょうど左側の斜めに座っていたのですが……祝詞の途中。家康先輩、左目を気にしていた様子を、一度だけ見ました」
政宗は右側で二、三人挟んで座っていた為、それには気づかなかったが、三成は祈祷中、それに気づいていた。
信長は全員の話を聞き、
「今、佐助にある事を調べさせている」
何か分かれば、
後日、詳しく話すと告げた。