第205章 天邪鬼の愛〜聴色〜(9)
ご祈祷を終え、
部員達は、鳥居を軽い足取りで出る。
その理由は、
「前、祝いに昼飯を食わしてやる。店には、先ほど連絡済みだ。織田の名を言えば、解る」
「「「ありがとうございます!」」」
「あの店のランチ!この前、雑誌に特集されてたよ!」
「いやぁ〜普段はもう鬼並みにこえーけどよ。こうゆう所は、懐が広いよなぁ〜」
信長に呼ばれた者以外は、
いそいそと店に向かった。
しかし、二人は数分前に
境内の石畳を歩き、裏手に移動していて……
くるりとひまりは髪を揺らして、背後にいる家康と向き合う。
「明日、いっぱい声援送るねっ!」
祈願が終わってから渡そうと決めていた物を、ブレザーのポケットから取り出すと、木影とは違う影が頭上から落ちる……
まだ、昼間の明るい中。
山中のように自然で溢れ、静寂が深い緑に囲まれた神聖的な場所。
そこに、重厚な雰囲気と……
トンッ……。
濃厚な情緒もあふれる。
「い、えやす……急にどう……」
言葉を繋ぐ間も無く、ひまりの口は塞がれ、背中は大木に塞がれ、逃げ場を失う。
何かに取り憑かれたように、家康は何も答えない。ただ、激しく追い求め、ひまりは呼吸のタイミングさえ見つからない、深い口付けに次第に脚がガクガクと震えだし……
溢れる吐息が、追い打ちをかけ……
「ん、っ……んっ…」
渡そうとしていた必勝守りが、危うく手から滑り落ちそうになったが……その手を唇と同じぐらい熱い手が支え、木に優しく縫い付ける。
「……願掛けさせて」
家康は、何故か無性に搔きむしりたくなるような、不可解な熱に侵されていたが、今にも切れそうな理性を繋ぎ、それだけ伝え、熱い視線を注ぐ。
目が吸い付くぐらい、互いの視線は絡み……木に片腕を添え、寄りかかった家康は……目前で誘う艶やかに濡れた唇に、吸い寄せられ……
くち、ゅ……。
神聖な場に水音を響かせた。
ひまりは、
(こんな所で、駄目なのに……)
と、心の中で戸惑いながらも……
「……ひまり」
時折、愛おしくらいの声で、名前を呼ばれ身体は拒むどころか、その熱を受け入れ続けた。