第205章 天邪鬼の愛〜聴色〜(9)
全国大会前日の、土曜日。
仲良く鳥居を潜る、家康とひまりの二人。朝練を終えた昼前、制服に身を包み……
「ご祈祷、終わったら渡すね」
肩を並べる。
「……また、鹿?」
「ふふっ。違うよ〜さて、何でしょう??」
ひまりはイタズラっぽく笑い、そっと家康に気づかれないように、ブレザーのポケットに触れた。
「……当てたら拗ねるから、言わない」
「え?何か分かるの?」
少し残念そうに、
ひまりがそう聞き返せば……
「嘘。……分かんない」
家康はふにっと頬を引っ張り、あえてそう答えた。何となく予想は出来ていたが、隣でそう聞いて、ふわりと嬉しそうに笑う、ひまりの為に。
そんな二人の前後に、弓道部員がぞろぞろと会話しながら歩く。
その光景を見ていた後輩達は、
「お、おい!い、今!部長!笑ったぜ!?」
「今日、付き合って一ヶ月記念らしいぜ。……じゃなくても、日頃と変わらないけどな」
「でも、部長と副部長見てると!こっちまで幸せ分けて貰えるよね!」
「「だよね〜〜」」
そしてその会話を、小耳に挟んだ二人。
「今年の戦国祭!お、そ、ら、くあの二人が選ばれるね!」
「お前、最近やたらと文化祭と学園祭の話。持ち出してねえか?」
政宗の隣で弓乃はギクッと肩を鳴らすと、慌てて「き、気のせいじゃない?」と、赤くなりそうな顔を背けて誤魔化す。政宗は面白がって、顔を覗き込もうとすれば、弓乃はズンズン足を動かして、逃げるように前を歩いた。
振り返る事もなく、
先頭を歩くのは、信長。
静かに口を閉ざして、
一番後ろに居たのは、光秀。
顧問と、副顧問に挟まれた弓道部員達は、境内で作務衣姿の秀吉を見つけ、駆け寄った。
「秀吉先輩!お久しぶりっす!」
「おい。俺はまだ卒業していない。校内でぐらい見かけるだろう?」
「たまには、部活に顔見せて下さいよ〜っ!」
相変わらず人気者の元部長。
あっという間に部員に囲まれた。