第204章 天邪鬼の愛〜聴色〜(8)
ガタンッ。
ひまりを机の上に座らせ、
俺はその前に立って、両手を付く。
「ちゃんと、目閉じてね」
「………努力はする」
「もう///ちゃんと目閉じてくれなきゃ、出来ない」
「……分かった。我慢する」
少しは。あえてその三文字は口に出さず、箱から出された、一本のポッキー。俺は、チョコじゃない部分の先を咥えて……
「ん…………」
「私が食べたら、スタートだから……」
同じぐらいの目線の高さ。
ポッキー越しにひまりが、意を決したように目を閉じる。
ポッキーより、赤みのある桜色の唇が薄っすら開いて……
スタートの合図みたいに、俺の肩に手が添えられた。
あの時は確か、甘酸っぱい苺味。
でも、今日のは甘い苺ミルク味。
ポリッ……
(……見るなって言われても、無理)
ずっとこうしていたくて、
ゆっくり食べたいけど。
俺は甘いだけのポッキーより、
早くひまりの唇が食べたい。
二人のゴールは真ん中。
ポリッ……ポリッ……。
たまに、薄っすら目を開けて調節しながら、近づいてくるひまりを見て……
バカみたいに心臓が煩かった。
茜色の夕陽に包まれた教室。
そんな、『俺の放課後』
家康様side〜fin〜
姫主様side〜continue…