第204章 天邪鬼の愛〜聴色〜(8)
ひまりの照れてる姿が、
差し込む茜色の光に溶け込む。
(……やばい。可愛い)
俺は、緩みそうになる頬から意識を外して、ヘアピンに触れていた指先に集中。撫でるように動かして、今度は髪を数本人差し指と親指で柔らかく挟んで、時間を掛け……ゆっくりと毛先まで滑らす。
指感触から伝わる、サラサラの質感。
離すのが勿体なくて……
「……だから?だけじゃ、分かんない」
何が言いたいか分かってても、あえて誤魔化して、そのまま意地悪く聞き返すと……
視界の端で、ひまりがピクッと肩を揺らすのが見えた。
毛先を挟んだまま、
目を合わせれば……
「……いぢわる」
恨めしそうに、大きな瞳が訴える。
(……迫力。全然ないし)
頬杖ついたまま笑えば、
ピンク色の頬がふくらむ。
ひまりは言わなくても、
態度で伝えてくる。
可愛くて、素直で。
たまに駄々こねるし、急に泣くし。
怒ったかと思えば、笑う。
我慢しなくて良い所で、我慢するし。
バカみたいに、お人好しで……
全部の感情。
一気にぶつけてくる時もある。
真っ直ぐで、ドジで、頑張り屋なのは良い所なんだろうけど……すぐ無理するから、こっちはお陰でヒヤヒヤしてる。
マラソン前も、顔色。
少し悪そうなのは気づいてた。やんわり見学するように促したけど、無駄に張り切ってたから、無理に止めなかっただけ。
(……こっちの気も知らないで、ほんと。心配ばっかさせて)
今度は、俺が恨めしい目を向ける番。
それを見たひまりは、膨らませた頬を引っ込めると、
「でも、メールにも書いてあったけど。一緒に破るってどうゆうこと??」
このまま睨めっこしてても、無駄に時間が過ぎると思ったのか。話を本題に戻した。