第204章 天邪鬼の愛〜聴色〜(8)
『放課後』shortstory…
放課後。
帰宅する生徒や部活に行く生徒で、ざわざわしていた数分前。政宗に部室の鍵を預け、練習メニューの言い伝えを頼んだ。
「早く、感想書いて部活いかないとね」
机を挟んで向かい合わせに座り、俺たちの間に、茜色の光が差し込む。昼間の喧騒が嘘のように消え、グランドで行われている部活動の声さえ遠い。締め切った窓のお陰で静かだった。
広げたA4サイズのコピー用紙。
白いから茜色に染まり、そこに一房落ちる長い髪。
「ひまり」
「ん?何か感想、浮かんだ?」
小さく響く柔らかい声。ただ、それが聞きたくて。顔にペンを添えて、俺を見ながら首を傾ける姿が見たくて、呼んだ……って、言ったら。可愛く怒るか、恥ずかしそうに笑うかのどっちか。
まぁ……
「……何も浮かばない」
言わないけど。
「だ〜めっ。二人で一つの感想なんだから。ちゃんと一緒に、考えてね?」
ひまりは、伏せ目がちにそう話すと、カチカチとペンから芯を出して、用紙にクラス名と「徳川家康」俺の名前をスラスラ書き込む。
そして、その隣に「姫宮ひまり」自分の名前をゆっくり書くと……
「何か、横並びで書くの照れちゃうね?///」
俺とは違って、
すぐに出てくる素直な言葉。
夕日の所為になんて出来ない、ピンク色の頬を見せてまで、口に出すとか……
(俺には考えられない)
たまに滑るように、本音が言えても。
大半は呑み込んでる俺とは、全然違う。
(その癖。変な所で我慢するから)
放っておけない。
頬杖ついてない、
もう一つの空いた手。
それを伸ばして、ヘアピンに触れる。
「校内、キス禁止令。解けたら考える」
「あ、あれはその…も、う解除する…よ?///」
チラリと俺を見上げる瞳。
目が合うと今度は泳がして「だから…///」その先は流石に言いにくそうに、もごもご口を動かす。