第203章 天邪鬼の愛〜聴色〜(7)
ガラガラッ!
「失礼しまーす!あれ?先生いない?」
「もしかして、テント戻ったんじゃない?」
「入れ違いかなぁ〜。それなら今がチャンスだよね!」
「三成くん!きっと、ベットで寝てるよ!」
「エンジェルの寝顔〜拝ませて貰おうよ〜〜」
「私、こっそり写メって待ち受けにしよう〜〜っと」
保健室に入ってきた数人の女子。その会話を聞いて、すぐに三成くんのファンクラブの子だと私は悟り……
(え!寝顔目的!?頭強打して、休んでるのに?)
そんな人徳もない行為。心配して様子を見に来たのなら、まだしも。
私は一言、注意しようと背を向けた………
その時。
腰に回る両腕。
グイッ!!
後ろに引っ張られる身体。
「ここかなぁ〜〜?」
近づいてくる足音。
ポフッ。
ベットの中に、
吸い込まれて……
Tシャツ越しに伝わった人肌。
「み、みつな………っ!」
口元に伸びてくる、
人差し指。
「しー……ですよ」
それが、唇に一瞬だけあたって。
布団を、
バサっと肩まで被された。
「しーっ。起こしたらまずいからね」
ハッとして、
私は慌てて目を瞑る。
シャッ!!
「あ、れ??」
ドキドキドキドキッ。
(このままだと、心臓の音が)
腰元からいつの間にか、
胸の前に移動した腕。
「まるで、早鐘のようですね」
背中にかかる熱い息。
私は布団の中で、ぎゅっと回った腕を握る。
「ちょっ!……三成くんじゃないよ」
今にも、
口から飛び出そうな心臓。
(早く出なさいよっ)
心の中で必死に訴える。
密着した部分に、上る熱。
時間にすれば、ほんの一瞬の出来事。
たった、数秒間。
それでも……
「貴方は、香りまで優しいですね」
生きた心地がしなかった。