第203章 天邪鬼の愛〜聴色〜(7)
それから……
「くしゅんっ!……はい。半分より多めに残しといたから。マラソン走ったから、その分お腹空いて……」
冷たい風がブレザーの中にまで、入り込んだ気がして、思わず出たくしゃみ。それに比べ政宗は、屋上に着いてもブレザーを羽織らず、無造作に脱ぎ捨てていた。
鼻を押さえながら、
お弁当を返そうと顔を上げ……
風がスッと通り過ぎた、瞬間。
(う…そ……)
心音が止まって、
壊れるかと思った。
「………っ!///」
何故か深い青い目の縁に、
赤みが帯びていて……
私は自分の目を疑う。
ぽかんと、口が自然に開くぐらい驚いて言葉を失い……初めて見る表情に、見るなと言われても食いつくように視線が外せないでいると……
政宗は照れ臭そうに、
顔を反対側に向けた。
「何で……照れてるの?」
「……うるさい///放っとけ」
「え?だって、そんな顔!初めて見たし!気になる!!」
超貴重だし!
理由よりも、もう一回見たくてグイグイッと、背中のシャツを強めに引っ張ると……
「……ったく!!なら、これ被ってろ」
バサッ!!
ふっと、頭に優しい暗闇が降りてきて、視界が消える。
鼻につく、
自分とは違う男の子の独特の香り。
その重みが政宗のブレザーだと、
理解した途端……
グイッ!!
「ちょっ!何すっ…………んっ」
ブレザーごと顔を引っ張られて、
唇に押し付けられた熱いモノ。
覆われた耳に、微かに届く……
「……俺の料理。そんな風に言うヤツ。お前が初めてだ」
切なさが微妙に、
入り混じったような、低い声。