第203章 天邪鬼の愛〜聴色〜(7)
実はここ数日。
少しでも女子力を磨こうと、お弁当を自分で作っていた私。急に交換を提案された時、正直、凄い焦った。
でも、これで美味しいって言われたら、ちょっと自信持てるかもしれない。
(ただ、政宗にまだ言ってないんだよね……自分で作ったってさ)
ってか、まだひまりにも言ってない。今まで、見た目も味もイマイチだったから、自分で作った!って威張れなくて急いで食べてたし……。それにさっき、家庭の味って言ってたよね?
政宗は、お母さんが作ったと思ってるっぽいから、今更……言い出しにくい。
(でも。今日は割と上手く出来たほう……)
な、はず。
チラッ。
「って!もう食べたの!?」
「あ?当たり前だ。この量なら、すぐに食い終わる。……ごちそーさん」
ご飯粒一つなく空っぽになったお弁当。ってか、それこそ感想一つなかったし。
(別に良いけどさ!それより、お母さんごめん!私の所為で、我が家の家庭の味を誤解させたかも……)
いつも働きながら、
美味しい料理作ってくれるのに。
鮭の味噌焼きは、お母さん直伝。
でも、ちょっと焦がしたから完璧には再現出来てない。
「おい。全部、食うつもりかよ」
「んぐんぐっ、もぐもぐっ!(美味しくて、箸止まんないのよ!)」
ツーンと無視して、もう乙女度も忘れ半ば、やけ食い状態で政宗のお弁当を頬張る。悔しいけど、優しくて、繊細な味で彩りも綺麗。
でも、豪快さも感じる。
私は箸を止めて、
ゴクンッと飲み込と……
「……前から思ってたけど、政宗の料理さ。……政宗みたいだよね」
素直な感想を言う。
突然、何を言ってんのよ?
って自分でもおもうけど、それが私の感想。男らしさも優しさも感じる料理は、家庭料理っていうより、政宗自身を連想させる。
半分以上、残したお弁当。
本当はまだ、食べたいけど我慢。
それに一旦、蓋をして膝に置くと……
「文句なしに、美味しかったです」
自分の中では、可愛げがある言い方をしたつもり。そう言って私は、手をそっと合わせた。