第203章 天邪鬼の愛〜聴色〜(7)
『屋上編』shortstory
階段を上って、
屋上へと繋がる扉を開くと……
ひゅうっと、冷んやりした風が吹き込んできて、私は思わず首をすくめた。
(意外にさむっ!……それもそっか。テストが終わったら、十一月だし。屋上で食べれるのも、今月で……)
十一月の行事が色々と多い、戦国学園。文化祭、それと別に戦国学園祭って一風変わった行事もあるし、後半には課外授業……だから、他の高校に比べるとテストが十日ぐらい早いのを、二年生になってから、他校の子と話しをして知ったってオチ。
政宗に続いて、屋上に出る。
マラソン大会中、晴れていた空はいつ間にか少し曇っていた。
でもそのお陰で、本日、貸切状態!!
(文化祭に告白するって、決めたんだから!頑張らないと!)
私は「寒い」って、出そうになる言葉をここは、引っ込めて……
「良かったの?お弁当、交換なんかで?せっかく、売店でスイーツ奢ったあげようと思ったのに」
寒さなんて全く感じなさそうな、逞しい背中に声を掛ける。
政宗は、いつもの位置に座り……
「女に奢らせる趣味はねぇよ」
フェンスの下に凭れた。
「何よカッコつけちゃって!」って普段なら、突っ込みを返していただろうけど……
私はお弁当をぎゅっと胸に抱き、まだズキズキと痛む膝を少し庇うようにして、ゆっくりと……政宗の左側に座った。
「たまには、他の家庭の味つーもんを、食ってみたいからな」
「でも、足りる?い、ち、お、う!女の子だから。お弁当のサイズ…政宗のより小さいわよ」
「お前、まさか俺のヤツ。全部、食うつもりか?」
「た、食べないわよ!こんな、大っきいの!」
はい!
胸に押しつけるように、お弁当箱を渡すと、「冗談だ、冗談」政宗は愉快そうに声を出して笑うのを見て……
思わず視線を逸らす。
いつもと同じぐらいの距離を開けて座ってるのに、声がいつもより近くに聞こえて、胸がドキドキ煩い。
「ほらよ。味わって食えよ」
政宗の大きな一段のお弁当箱。
それを受け取って、手を合わせて蓋を開けた。
(いつ見ても美味しそう〜っ!それに引き換え……)
心配になってチラッと盗み見。
箸を持ち上げて、
「おっ!……鮭の味噌焼きか」
次々、政宗の口の中に消えていく。