第202章 天邪鬼の愛〜聴色〜(6)
さわさわと風が吹き……
頭上からヒラヒラと赤い紅葉が、
落ちて視界に映り……
その先で……
「……また、会ったね」
赤い瞳が私を見ていた。
織田先生とは違う赤色。
明るい色味じゃなくて、
深くてガラスみたいに透明な……
クスッ。
「そんなに見つめられたら、照れるんだけど」
「ご、ごめんなさい!」
私はその言葉に咄嗟に謝ると、
軽く頭を下げて挨拶をする。
いつの間にか、手を伸ばせばすぐに触れれる距離までその人は近づいていて、一歩後ずさりすれば背中に伝わった、ザラザラとした感触。
寄りかかっていた、木にぶつかり、
それ以上は下がることが出来ない。
(あの時に、ぶつかった人だよね?)
今度はあまり瞳を見ないように気をつけながら、目の前で佇む人の顔を見た。
陸部の子達が、家康に似ていたって話していたのを思い出す。
(ん〜?言われて見れば、ちょっとだけ似てるかな?)
髪色は私と同じ栗色。
でも、ふわふわ猫っ毛じゃなくてサラサラストレート。幸より、少し長めでやっぱり右目だけ前髪で隠れている。
背丈は……確かに家康ぐらい?
約二十センチ差の私と家康。
並ぶと、いつも家康の肩より少し上に私の頭が出るから……
ちょうどこれぐらい……
(って!ち、近い!!)
呑気にそんな事を、考えている場合じゃなかったのを、目前まで迫った顔を見て気づく。
「あ、あの!もう少し、下がって貰えませんか?」
「だって、俺の目。気になるんでしょ?」
「気になったというかっ。そ、の…綺麗な色だなって思っただけで」
「ひまりのが、綺麗だよ」
え?何で名前……
クスッ。
「この前、そう呼ばれてたから」
私の心の声に、その人は答えて笑う。
(あ……今の笑顔。……似てる)
家康が、滅多に見せない特別な笑顔。
髪色のお日様みたいに、
あったかくて柔らかい……。
でも、家康はこの笑顔の時……
いつも目元が赤い。
そこだけは、違う。
雰囲気はそっくりだけど。