第201章 天邪鬼の愛〜聴色〜(5)
座り込むのを見た、
政宗は弓乃の元へ行き……
膝から血を流しているのに、気づき……
「………乗れ」
背を向け屈み込んだ。
「い、いいわよ!大したことないし!それより、入賞逃し……『他のヤツの邪魔だ。早くしろ』」
言葉を途中で遮るほど、急き立てた。決して、弓乃に怒っていた訳ではなく……咄嗟に取った行動に自分自身が、一番驚き戸惑いから出た感情。
「でも……汗。……かいてるし」
「そんなもん。俺も、同じだ」
弓乃は嬉しさ半分、
恥ずかしさが半分だったが……
自分に向けらた広い背中を見て、立ち上がり、肩にそっと手を添え……
「お、重いとか。い、…言わないでよ」
「……言わないでやる。その代わり……」
「そ、その代わり、何よ……」
政宗は軽く笑みを浮かべそれには応えず、膝裏に手を回して、立ち上がった。
「ハッ……ハッ……ハァッ…(あいつが先頭)」
少し前を走る先頭を追うように、ラストスパートをかけた家康。しかし、途中、途中、ひまりの姿を気にして、チラチラと女子の集団が通る度に視線を向けていた。
しかし、
(いない。どっかですれ違ったとか?)
一周目を終え、校内に入った時。
スタートラインに立ち、弓乃と雑談をしていた姿を見ていた家康は、不思議な思いながら、足を動かす。
実は、少し前……
ひまりは、と言うと……
ズキンッ…、
ズキッズキッ……。
重くなる足。
下腹部だけじゃなく、
頭痛と腰痛まで痛みが広がり……
中間グループの中から出て、邪魔にならないようにコースから外れていた。
(何でだろう。薬が効かない……)
近くにあった木に寄りかかり、腹部を押さえる。昨夜にきた、月のもの。普段は痛みを伴うのさえ少なく、薬を飲むことさえあまりない。
暫くそこで休んでいた時だ。
「……また、会ったね」
あの謎の青年に、声を掛けられ……
軽く頭を下げていた。