第201章 天邪鬼の愛〜聴色〜(5)
男子が二週目に入り、中間あたりのグループが過ぎた頃に、スタートした女子。
「ゆっちゃん!入賞狙って頑張ってね!」
「よし!ひまりの分まで頑張るか!!無理せずに走んなよ!」
三成が運ばれてきたのを見て、副部長は付き添いを希望し、弓乃はひまりの分まで頑張ろうと、先頭グループに入る。体調さえ万全であれば、ひまりも本来は先頭集団。中学のバスケで鍛えた脚力を生かし、去年は入賞したレベルの身体能力をドジでも、そこは別として持っていたが……
敢えて、ペースを落として走る。
薬があまり効かず、中間グループに混ざった。
しかし、中間グループ以降の男子は……
死にものぐるいで……
「ぎゃぁああ!!先生!勘弁して下さい!!」
「お、鬼が赤い車で追いかけてーっ!!」
上がらない足を、必死に動かして逃げ惑っていた。
校内マラソン大会の為に、わざわざ道路を通行止めにした信長。
今日は赤いオープン車に乗り、
「貴様ら。本気を出せば、まだ走れるではないか?」
ニヤリと口角を上げ、追い回す。
しかし、サングラスに隠された瞳は微かに、充血していた。
そんな悲鳴を、
薄っすら聞きながら……
ポイントを折り返して、再び校内のゴールに向かっていた家康と政宗。
「ハッ、ハッ……(俺のゴールはひまり!!)」
「ハァッ……(今、何位だ?)」
先頭集団に混ざったまま、入賞目指してラストスパートをかける。流石に息を切らして、家康はTシャツの胸元を掴み、頬に流れる汗を拭うと……
(キャーッ///)
(い、家康くんのチラ腹筋///)
それを見た、
すれ違う女子を、悩殺。
ひまりという彼女ができ、ある程度、人気は落ち着いたとは言え……その姿には女子も堪らず、きゅんきゅん悶える。
一人を除いて。
「政宗!あと、二人は追い越さないと入賞!いけな…っ…」
ドンッ!
先頭集団の後方にいた弓乃。前方から走ってくる政宗に気づき、声を張り上げた時……
「……っ!!」
ドスッ!!
隣を走っていた女子生徒と、肩が思い切りぶつかり……派手に転んだのだ。
(……ったく!)
政宗は、舌打ちをして弓乃の元に向かった。