第200章 天邪鬼の愛〜聴色〜(4)
突然のお父さんの登場。
家康は「後でメールする」そう耳元で囁くと、お父さんに近づいて頭を軽く下げ、簡単な挨拶を交わすと、家に向かって歩いていく。
「お父さん!ほら、中に入ろう!」
「あ、あぁ。……ひまり」
「ん??なぁに?」
玄関に入る一歩前。
扉を開けてくれた、
お父さんを見上げると……
「……綺麗になったな」
そう言って、
頭をぽんぽんと数回叩くと、私と目を合わさずに中に入っていく。
……ありがとう。お父さん。
スーツに包まれた背中を見つめながら、心の中でそう、お礼を言う。何で急にそんな事を言ったのかは、私には分からなかったけど……温かいその声が、ただ嬉しかった。
夕飯を済まして、お風呂に入る前に感じた下腹部の痛み。
(はぁ……。明日は、マラソン大会なのに……)
とりあえず様子を見て、判断しようと痛み止めを鞄の中に入れると……ベットの上でメールの着信音が鳴る。
『校内禁止令。明日、一緒に破るから。返事は良いから……早く、寝なよ』
一緒に??
ちょっと、疑問に思いながら……
早く寝なよ。
その文字に、緩む頬を指で突っついた。
返信しようと、指を動かした時。
バサッ……
机の棚から風もないのに……
書物が落ちる。
一緒に挟んであった
ハートの栞と、三つ葉の栞。
それが、不気味さを感じる程。
ヒラヒラ……
紅葉が枯れて……
ゆっくり、地面に落ちるように……
床の上に三つ葉の栞が落ちて。
書物の上にハートの栞が落ちた。