第200章 天邪鬼の愛〜聴色〜(4)
前に聞いたことがある。
友達だったかな?テレビ?
映画……どれかは忘れちゃったけど。
恋は一人でも出来るけど、
恋愛は二人でするものだって___
『ガマンしていれば…』
『こうして欲しい!』
ガマンも、押し付けもダメなんじゃなくて。ただ、二つのバランスが大事で。
一方的、一方通行なのは良くない。
心のバランスは、
どうしても取りにくい時があって……
いつもは気にならないことが、急に気になったり。普段、何気ない日常が、急に不安になったりして……
これからも、変なこと言いだしたり、素直になれなかったり、突然、泣いたりするかもしれない。
でも……
「こんな、好きな子として。ドキドキしない訳ない」
苦しいぐらい抱き締められて、胸がギュってなったり、キュンって鳴ったり……。家康の腕の中にいると「好き」と「幸せ」がいっぱい溢れて……
モヤモヤして、
霧ががかっていた心が晴れていく。
「……ほ、んと?」
顔を胸から離して、上を向けば……
涙が目尻から耳を伝い……
そこに、
ほんと。
優しい声も降りてきて……
「……それでもキスしたい。あと、ひまりからされた時は……」
心臓。……多分、止まってる。
「まだ、数回しかないから。分かんないけど」
涙で霞んだ視界。
そこには少し照れて、優しさが滲んだ家康が居て……私は、そっと胸に手をあてる。
トクトク刻む音。
「………私も、…したい」
だから、教えて。
そう呟いて……
「え……」
目を閉じて。
ロファーの踵を上げて。
目一杯、背伸び。
恥ずかしいけど、
それ以上に今は……。
唇が触れる一瞬。
ドクンッと、
手から伝わった鼓動。
それが、
唇が触れた瞬間に……
その響きが静かになる。
まるで、時が止まったように。
(……ほんと…だ…)
踵を下ろすと、
またトクトク動き出す。