第199章 天邪鬼の愛〜聴色〜(3)※家康様side
更衣室で道着に着替え、
道場入ると……
パタパタと、
俺の所に走り寄ってくるひまり。
待ってたよ!
そう言いながら、嬉しそうに笑う。
「い、家康!?」
気づいたら、無意識に腕を引っ張って……後頭部を掴んでた。
(今の俺に。……その笑顔は反則)
そんな笑顔を向けられたら、
キスしたくなる。
ってか、俺の中では
「可愛い」って言うのと、同じ。
確かに織田先生の言う通り、下心、独占欲。全くないわけじゃない。普通にあるし。だから、校内ではなるべく軽いキスだけに押さえてた。触れたら、止まんなくなるから。
ーー挨拶じゃないんだからーっ!
そんな風に勘違いして欲しくない。これ以上、強引にひまりからキスさせようと煽るような手を使うと……返って混乱して、不安を煽らせるのが一番良くないか。
「今日は、自主練中心で」
耳元で、それだけ言って、ぎゅっと瞳を閉じたひまりの唇に視線が落ちる前に、俺は離れた。
帰路に着く間。
ひまりは、家に近づくに連れて口数が減り、繋いだ手に徐々に力が入る。
「禁止令」は、あくまでも校内限定。
昨日の帰りと今朝は、自覚させる為にあえてしなかった。
(……今は、何か悩んでるっぽいし)
月明かりがなく辺りは、暗い。
街灯も住宅街の割には少なく、ひまりの表情も半分は横髪で隠れ……
気づいたら、家の前に。
同時に足を止め、俺は名残惜しい気持ちを残しながら、繋いでいた手を解く。
「早く寝なよ。じゃないと、明日のマラソン。バテるよ」
明智先生が言ってた通り、本当にそうゆう周期なら身体を休めるのが一番良いはず。
キスしたい気持ちを押さえ、
普段通りに接する。