第199章 天邪鬼の愛〜聴色〜(3)※家康様side
軽く一礼して、扉を閉め……
「何の用ですか?」
奥の壁に寄りかかる織田先生に、
俺は単刀直入に用件を尋ねる。
けど、返ってきたのは……
「俺は貴様に、用などない」
ニヤリと上がる口角。
わざわざ教室で用件も告げずに、職員室に呼んでおいて……第一声がそれ?
「……さっき、ホームルームで言いましたよね」
「クッ。用があるのは、俺だ」
ぽんっ。
背後から急に聞こえた声。
俺が振り返るよりも早く、肩を叩いて明智先生は隣に立つ。
「聞きたいことがあってな。日曜日の夜。お前、何処にいた?」
「日曜の夜?……予備校に居ましたけど」
俺は眉間に皺を寄せて、答える。
何でそんな事を聞くのか。と、尋ねれば明智先生は八時頃に、山行きのバス停で俺を見たらしい。
それを聞いて、部活終了後。
ひまりと帰り、シャワー浴び、早めの夕飯を済まし、七時半には家を出て、予備校に向かった。俺はその事を簡単に話した後……
「完全に人違いです。八時なら予備校に居ました。大体、山行きのバスとか……あり得ません」
そう断言する。
「俺も見たのは一瞬で、暗かったからな。もし、お前だったら、夜間にフラフラしてるのであれば、注意する必要があると思ってな」
ひまりを、そんな時間に連れ回し始めたら大問題だからな?とか、言って明智先生が喉を鳴らして笑う。
その前で、今まで口を挟むことなく静かに窓の外を見ていた織田先生。その視線がスッと俺に動いて……
「貴様、予備校は夕方ではなかったか?」
「この時期。三年生が、優先に受講の時間を考慮されるので……」
日によって時間が違う。
お陰でひまりとの予定も組みにくい上、まだ付き合ってから、デートらしいデートは一度もなし。
だから大会終了後、テスト期間に入る前にある祝日。そこで、約束するつもりでいた。