第199章 天邪鬼の愛〜聴色〜(3)※家康様side
付き合ってから、
一ヶ月が経とうとしていた頃。
昼休みに石碑の前で、ひまりに膝枕して貰ってかなり幸せに浸ってた所……
腕を伸ばして、
キスしようとしたら……
「何これ……?」
体を起こして、眉を寄せる。
ひまりが唇の前に出したのは、
一枚のハートのメモ。
『キス禁止令!』
その文字と「校内では、だめっ///」の、言葉に俺は一気に、寄せた眉を今度は引きつった。
メモを奪い、後ろに投げ、無視してキスしたら、キスは挨拶じゃないとか言って暴れ出して。
(どうせまた、小春川にでも変なこと吹き込まれたんだろうけど)
約半日は、学校で過ごしてんのに、校内でキス禁止とか。俺の中では、ほぼ、一日しないのと変わんない。
そんなの無理に決まってんのに。
「禁止は禁止なの!」
可愛く頬膨らませて、腕の中で必死に睨めっこしてくるお姫様。
キス禁止の意味、
ちゃんと分かってんの?
俺の、愛情表現は要らない。
一切触るなって、言われてるのと変わんないぐらい辛いんだけど。
でも、言い出したらひまりは聞かない。ちゃんと「キス禁止」の意味を理解するか、自覚するまで。
(これは、かなり頑張らないと)
すっごい不本意だけど、
「ふ〜ん。分かった。なら……俺からはしない」
自分でも呆れるぐらい、ふてくされた口調でそう言うと。ひまりは、ホッと安心の溜息を漏らした。
これは、早急に手を打たないと、
俺の我慢の限界がくる。
そう考え……
放課後。壁に追い詰めて、
「だから、日直で!」
「日直で?」
「お、遅れるから!」
わざと聞こえないフリをして、腕を拘束。そして、唇に触れそうな距離まで近づければ、ひまりは顔を真っ赤にしながら目をぎゅっと閉じる。
「遅れるから?」
こうして俺の過酷な時間が、始まる。