第197章 天邪鬼の愛〜聴色〜(1)
好きな人と「Kiss」
目を閉じる前のドキドキも、する前の甘い雰囲気も、した後のくすぐったい幸せな気持ちも……特別。
二人っきりの時。
帰りの夕暮れ時。
デートの最中……
恋人同士の大切なスキンシップ。
柔らかくて、甘くて、心が通じ合ってるみたいで、嬉しいけど……
少しも嫌じゃないけど……
私だってしたいけど……
でも、でも、でもっ!!
廊下、屋上、教室……授業中はさすがにないけど!!登校中のをカウントなしで、校内にいる間のお昼休みの今だけでも、もう五回はしたはず!
「……無理」
聞く耳一切なしの家康。
私が唇にあてたメモをピッ!と、奪って後ろに向かってポイッ!って投げたのが見えた瞬間。
チュッ。
呆気なく唇を奪われ、本日、六回目のキス。
提案したばかりの禁止令を、無視される。
「もーっ///ダメだってば!」
顔を横に向けて、家康の胸を押し返す。芝生の上で一人ジタバタ暴れる私。禁止令を出したのは、ある理由があったから。
だから、
「挨拶じゃないんだからーっ!」
「そんなつもりで、してないし」
ここは必死に訴える。けど、腰を掴まれて完全に動きを封じられて……コツンとおでこがぶつかった。
「……俺に我慢しろって言いたいの?」
不機嫌全開の声で、真顔の家康。
拗ねてるような、怒ってるような…
それが逆に威圧感があって、
思わず怯みそうになるけど……
「校内だけだもんっ」
私は、視線を逸らさずに頑張る!
「朝から夕方。ほぼ半日、学校にいるのに、無理言わないでくれる?」
「禁止は禁止なの!」
頬を膨らませた私と、
仏頂面をする家康。
至近距離で、
暫く睨めっこを繰り広げた結果。
「ふ〜ん。分かった。なら……」
俺からはしない。
その言葉の裏にある意味に、私は気づかないまま、ホッと胸を撫で下ろした。